7.21.2014

既に持っているフォントを、より美しく

こんにちは、的場仁利です。今回は、合成フォントによる、見やすく、美しいフォント、NM-ACUを試作しましたので、シェアさせていただきます。

フォントを取り巻く状況

フォントを取り巻く状況は、パソコンの普及やソフトウェアビジネスの変化の中で、少しずつ良くなっています。フォントワークスのLETS(2002年)やMORISAWA PASSPORT(2005年)等の全てのフォントが使える年間契約の登場、Windows 8.1とMac OS X Mavericks(共に2013年)に游明朝と游ゴシックがバンドルされたこと、2014年7月16日にアドビとGoogle等によるオープンソースフォントファミリーSource Han Sans/Noto Sans CJKがリリースされたこと等々、たくさんのポジティブな話題があります。
 しかし、誰もが年間プランに入る予算があるわけではないですし、バンドルフォントや無償のフォントは万能ではなく、数も多くありません。そしてフォントベンダーの感覚とデザイナーの感覚にはずれがあるということもあるのではないでしょうか。

内容表示のためのフォントがない!?

私が仕事をする中で、商品の内容表示(一括表示)を作ることがあります。私が扱う商品は、商品自体が小さなサイズのものが多いため、それに伴い内容表示も小さく、法定最低文字サイズの5.5ptにしなくてはならないこともままあります。 このような場合を見越して、私は小級数でもつぶれにくいヒラギノUD角ゴFをベースにした合成フォントを使っていました。
このフォントは、つぶれにくいヒラギノ角ゴシックの漢字に、ゴナ系の仮名と、UD系=Frutiger系の英数字が組み合わされたもので、つぶれにくいだけでなく、モダンでカッコいいデザインで気に入って使っていました。 しかし、ある時このフォントをお持ちでない方とお仕事をご一緒する場面に遭遇しました。この仕事は手早く終わらせたい案件であったため、わざわざフォントを買っていただくことも、こちらで購入してお渡しすることも難しい状況でした。
バンドルフォントや、他の似たようなものでお値打ちなものをいろいろと探したのですが、どれも決め手に欠けるため、少し発想を変えようと思い、このことを加納佑輔さんにも一緒に考えてもらいました。
そうしたところ色々とアイデアが広がり、最終的には、我々は合成フォントのヘビーユーザーなので、バンドルフォントを組み合わせることでなんとかならないだろうかという話になりました。そしてさらに、多くの人が既に持っているフォントをより美しく使うことができるのであれば、多くの人とお仕事を共有できるというアイデアにまで広がりました。

バンドルフォントによる、見やすく、美しい合成フォント

このような経緯から生まれた企画を、次の内容で合成フォントに設計しました。

◎ゴシック体、明朝体共通
用途としては、グラフィックデザイン全般を想定。モダン系のビジュアルにおいて、見出しから、本文まで幅広く対応。アプリケーションは、Adobe InDesign CS6で作成。 フォント名は、日本語デザイン研究会の活動にご協力いただいている松井ゆりさんとブレインストーミングをしてNM-ACUと命名。

◎ゴシック体版
[漢字]つぶれにくく、美しい、ヒラギノ角ゴシック(Mac OS Xバンドル、MORISAWA PASSPORT収録)。
[かな]も自然なデザインのヒラギノ角ゴシック。
[全角記号][半角欧文][半角数字]は、Frutiger系、Myriad系の小塚ゴシック(Adobeアプリケーションにバンドル)。
[全角約物]は、ウエイトが上がっても括弧類が太くならない明朝系で、かぎ括弧の大きさが適度な小塚明朝(Adobeアプリケーションにバンドル)。
様々な仕事で利用することを考え、全角英数字、丸付き数字、囲み数字、単位等々もできるだけ全て同じデザインの文字が表示されるようにする。

◎明朝体版
現代の日本語の文字は明朝体が基本なので、明朝体版も用意する。
[漢字]つぶれにくく、美しい、ヒラギノ明朝(Mac OS Xバンドル、MORISAWA PASSPORT収録)。
[かな]も自然なヒラギノ明朝。
[全角約物][全角記号]は、自然なデザインの小塚明朝(Adobeアプリケーションにバンドル)。
[半角欧文][半角数字]は、トランジショナル・モダンなAdobe Caslon(Adobeアプリケーションにバンドル)。全角英数字と半角英数字のデザインがゴシック体版ほどマッチしないが、使用頻度の高い半角英数字部分の自然さ、カッコよさを基準に選択。そのためOpenType機能の欧文イタリックが使えない等の制限があり。

合成フォントファミリーNM-ACUは、上記の特徴を持った合成フォントで、現在InDesign版のみです。今後Illustrator版も作成し、InDesignとIllustratorのどちらでも使用できるIllustrator版で正式リリースとしたいと考えていることもあり、テスト版としてダウンロードできるようにします。


フォントのイメージと比較

約物・記号類で
デフォルトから特別に変更したもの


NM-ACUフォント2014年7月21日現在のラインナップ

◎JIS2004字形対応版
⇒ https://drive.google.com/file/d/0B2Aac8b8V5_5YkxZY0UwYldzNms/edit?usp=sharing
ゴシック体
NM-ACU-Sans-ProN-W3
NM-ACU-Sans-ProN-W6
NM-ACU-Sans-StdN-W8

明朝体
NM-ACU-Serif-ProN-W3
NM-ACU-Serif-ProN-W6

◎JIS90字形対応版
⇒ https://drive.google.com/file/d/0B2Aac8b8V5_5VTA5blQwLVNmems/edit?usp=sharing
ゴシック体
NM-ACU-Sans-Pro-W3
NM-ACU-Sans-Pro-W6
NM-ACU-Sans-Std-W8

明朝体
NM-ACU-Serif-Pro-W3
NM-ACU-Serif-Pro-W6


協力のお願い

この合成フォントファミリーNM-ACUは、例外文字を多数登録するため、例外文字が複数登録でき、コピーペーストでも登録できる、InDesign(CS6)で作成しました。作りやすさを優先してInDesignで作成したのですが、アプリケーションのユーザーの数としてはIllustratorが圧倒的に多いと思われます。この合成フォントをより多くの人に使っていただけるようIllustrator化したいと考えていますが、私の知り得る方法では、Illustratorでの合成フォントの例外文字の登録は1文字ずつしかできないため手に負えないと思っています。
InDesignからIllustratorへ合成フォントファイル書き出す方法、もしくは、スクリプトや何らかの方法でIllustratorで例外文字を効率的に登録する方法お持ちの方の協力を募ります。件名を「NM-ACUの件」として、的場仁利(nori.matobaアットマークgmail.com)までご連絡ください。