4.20.2017

書体の誕生 講演&展示

4月14–16日に大阪で、フォントに関するイベント「書体の誕生」が開催されました。2014年の第一回目に比べ、今回は参加するフォントベンダーも4社に増え、内容もさらに充実したものになりました。15日、16日にはそれぞれ講演会も行われました。
以前の予告通り、展示には私が制作した展示パネルを出品しました。



【展示】
イワタ、白舟書体、フォントワークス、モトヤの4社による展示の他、手動写植機の実演・展示、坂野公一さんと長久雅行さんの装丁展示、長久さんと私の制作パネル展示といった構成でした。
全体をざっと見渡して、最初に目についたのが、白舟書体の元字展示。フォントになっているものと全然違う! フォント製作用に書家の方が書き起こした文字は、当然にじみやかすれがフォントよりも強く、文字としての魅力に溢れていました。今後、このアナログ感をどこまでフォントで再現できるか、ということが重要になってくるのでは、と思い、担当の方に「もっとアナログ感をお願いします」と伝えました。
モトヤは、以前モトヤ本社の資料館でも見学させていただいた、昔の活字見本帳や、活字の母型など、資料的価値の高い展示が多い印象でした。
フォントワークスは、最近リリースされた「筑紫新聞明朝」と「Monotype Lets」の話題性ある展示が印象的でした。
イワタは、新しい書体として展示されていたイワタ新ゴシック用かな書体や、予告としてパンフレットに出ていた「金属活字直系超極太明朝体」や「丸ゴシック体」が気になりました。

私が展示出品したのは4社の『楷書系書体比較』と、その楷書系書体の漢字を用いて作成した『合成フォント見本帳』です。私がこの展示を出品するのは、書体の楽しさ・奥深さを色々な人に味わってもらいたいからです。デザイナーやWeb、DTP関係の方の何らかの参考になれば、と思います。



PDFデータを用意しましたので、会場でじっくり見られなかった人や、行けなかった人などはダウンロードしてみてください。

◉ダウンロード
楷書系書体見本
・合成フォント見本帳_弘道軒清朝体復刻版編(通常版組継ぎ本版
・合成フォント見本帳_モトヤ楷書編(通常版組継ぎ本版
・合成フォント見本帳_白舟楷書編(通常版組継ぎ本版
・合成フォント見本帳_グレコ編(通常版組継ぎ本版

※組継ぎ本版は、A3サイズに見開き・両面刷りで出力して、組継ぎ本形式で製本できるようになっています。


【講演】
坂野公一さんの講演は、よく使うお気に入り書体の話や、実際のデータを開いての、デザイン制作の方法や設定など、とても参考になるお話でした。
その後は藤田さんと坂野さんのトークセッション。藤田さんのこれまでの書体デザイナーとしてのキャリアと、筑紫シリーズの話、その後どのように新しい書体に取り組んでいるか、という話のなかで、坂野さんがデザイナーとして色々な質問をする、という形式で、リラックスした雰囲気のなか、時折飛び出す藤田さんの本音が面白かったです。こういう話は、実際に足を運ばないと聞けないので、とても貴重な講演だったと思います。
印象的だったのは2人とも自分が「主流ではない」といったニュアンスのことを言い、単に自身が好きなデザインを追求しているだけと話していたことです。にもかかわらず、客観的に見れば2人とも商業的な成功を成し遂げているわけで、本当に凄いことだと思いました。



2つの講演が終わった後、「フォントかるた」大会が開催。20人以上が参加し、予想以上に白熱しました。形状が似ている紛らわしい書体も含む、48種類の札を見分けて、争奪する様子は滅多に見られない異様な光景だったかもしれません。私の成績は12枚程度と、まずまずの成績でしたが、やはり自分が普段使用しないポップ系の書体は難しかったです。

その後、関口さんによるWebフォントの話があり(そうさすのWebサイトも事例として紹介していただきました)、この日のイベントは終了。

イベント後の懇親会では、書体好きなデザイナーの方や、フォントデザイナーの方などと、たっぷりと書体の話ができて楽しい1日を過ごすことができました。